ソースに絡まるエスカルゴ

貧弱プログラマの外部記憶装置です。

【KiCad】KiCadでフットプリントとシンボルを自作する

 過去にKiCadの記事を書いてからかなり時間が空いてしまいました。

 その間にも度々KiCadを使って基板発注をしたりはしていたのですが、きちんと記事にしてなかったので今回はその第一歩目としてフットプリントとシンボルを自作する内容になります。
 また今回はKiCad 8.0を使用しているため、古いバージョンとは違う部分がある可能性もあるので注意してください。

 より詳しく知りたい場合は参考資料に挙げているページ様を参照してください。


 では、始めます。


1:フットプリント、シンボルとは
 まずはフットプリントとシンボルについて簡単に説明します。

 フットプリントとは、簡単に言うと「その電子部品を配置する基板上に作成される穴やピン、はんだ付けをする金属面などのデータ」のようなもので、シンボルとは「回路図を作成する際の電子部品の概念図のデータ」のようなものです。

 具体的には以下のようなものです。

・フットプリント例

・シンボル例

 以下の記事で書いたように、フットプリントやシンボルのデータを探して存在していればそれをダウンロードしてKiCadに読み込むことができます。

 しかしデータが存在しない電子部品も数多くあるため、その電子部品を使った基板作成をするにはフットプリントとシンボルを自分で作成する必要があります。

 今回は例として以下の電子部品のフットプリントとシンボルを作ってみようと思います。


2:PKM22EPPH4001-B0のフットプリント作成
 最初にフットプリントを作ってみます。

 KiCadを起動させて「フットプリントエディター」をクリックします。

 フットプリントエディター画面が開くので、左上のメニューにある「ファイル」→「新規ライブラリ」を選択します。

 フットプリントデータの保存場所が聞かれるので、適切な場所を指定します。基本的に保存名は電子部品の型番にした方がわかりやすいと思います。
 今回の場合はマイドキュメント配下に作成された「KiCad」フォルダの中に「third_lib」というフォルダを作り、更にその中に圧電スピーカーの型番である「PKM22EPPH4001-B0」というフォルダを作成しました。そしてその中に「PKM22EPPH4001-B0」という名前で保存しています。

 左側の一覧に作成した新規ライブラリが追加されているので、そのライブラリを選択した状態で右クリックをし、出てきた中から「新規フットプリント」を選択します。

 以下のようなダイアログが出てくるので、フットプリント名を入力しフットプリントタイプを選択します。ここも基本的にはフットプリント名は型番を入力した方がわかりやすいかと思います。

 ここで選択するフットプリントタイプですが、表面実装の場合は「SMD」、基板にピンを挿す実装の場合は「スルーホール」を選択してください。

 圧電スピーカーのフットプリントを作りたいので、今回は「スルーホール」を選択して「OK」をクリックします。

 これで以下のように空のフットプリントが作成されます。

 ここからフットプリントを実際に作っていくわけですが、大体のデータシートには寸法図が記載されているので、それを見ながらフットプリントを作成していきます。
 先に挙げた商品ページにPKM22EPPH4001-B0のデータシートがあるのでそれを開きます。

 中身を見ていくと、以下の寸法図があるのでこれを見ながらフットプリントを作成していくことになります。(PKM22EPPH4001-B0のデータシートより引用)

 まずはシルク部分を作成してみます。シルクとは基板上に印刷される文字やマーク部分のことです。
 PKM22EPPH4001-B0の寸法図から圧電スピーカーの大きさはφ22.0、つまりは直径22mmなので、そのシルクを作成します。

 右側の「F.Silkscreen」を左クリックで選択した状態で赤枠の「円を描く」アイコンを選択します。その状態で描画範囲の中心をクリックした後、マウスを動かして適切な直径になるように調節します。

 円を描いた後、赤枠の「計測ツール」を使って距離を確認することもできます。

 シルク部分ができたので、次はピンを挿してはんだ付けする部分を作ります。

 赤枠の「パッドを追加」アイコンを選択し、その状態で描画範囲を2回クリックして2つのパッドを追加します。後で調節するので場所や番号がずれていても問題ありません。

 寸法図を確認すると、ピンは2本でその距離は10.0mm、ピンの太さは0.8mmとなっているのでそれに合うようパッドを編集します。

 赤枠の「アイテムを選択」アイコンを選択した状態で、対象のパッドをダブルクリックします。

 プロパティ画面が開くので、パッド番号、穴の直径、パッドの直径をそれぞれ適切な値に変更して「OK」をクリックします。今回はパッド番号を1、穴の直径を1mm、パッドの直径を2mmに変更しました。

 同様にしてもう一つのパッドもプロパティ画面から編集し、パッド番号を2、穴の直径を1mm、パッドの直径を2mmに変更します。

 次はパッドの位置合わせを行います。2つのパッドの距離は10mmなので、それぞれ円の中心点から5mmのところに配置すれば良いです。
「アイテムの選択」アイコンを選択した状態で一度対象をクリックし、それをドラッグすることで対象を移動させることができます。またグリッド間隔をメニュー上部から変更できるので、適切な値にしておくと移動や配置が便利になります。

 基板になった時の状態を確認したい場合は、上部メニューにある「表示」→「3Dビューアー」をクリックします。

 マウスをドラッグして動かすことで、以下のように基板の完成図を3Dモデルとして確認できます。

 最後に「Ctrl + Sキー」またはメニューにある「保存」アイコンをクリックしてフットプリントを保存します。

 これでフットプリントは完成になります。

 追加でパッドのどちらに+を繋ぐかーを繋ぐかがわかりやすいように、シルクとして+やーのマークをパッドの近くに入れるなどをしても良いかと思います。


3:PKM22EPPH4001-B0のシンボル作成
 次にシンボルを作ります。

 KiCadの起動画面から「シンボルエディター」をクリックします。

 シンボルエディタが開くので、上部メニューにある「ファイル」→「新規ライブラリ」をクリックします。

 ライブラリ保存場所を指定して「保存」ボタンをクリックします。ここも型番名で保存しておいた方がわかりやすいと思います。今回はフットプリントと同じフォルダに「PKM22EPPH4001-B0」の型番名として保存しています。

 左側の一覧にライブラリが追加されるので、それを右クリックして出てきた中にある「新規シンボル」をクリックします。

 以下のダイアログが表示されるので、シンボル名、デフォルトのリファレンス指定子を入力して「OK」をクリックします。シンボル名は型番がわかりやすくて良いかと思います。リファレンス指定子は、抵抗ならR、マイコンならUなど、種類がわかるものを指定します。
 今回はブザーなのでシンボル名は型番の「PKM22EPPH4001-B0」、リファレンス指定子は「BZ」としています。

 空のシンボルが作成されます。

 次は空のシンボルにピンを追加していきます。

 右側にある「ピンを追加」アイコンをクリックすると、以下のようにピンのプロパティ画面が表示されます。
 赤枠で囲っているピン名、ピン番号、エレクトリカルタイプ、向きに適切な値を入力して「OK」をクリックします。ピン番号は必ずフットプリントと対応するものを設定してください。
 今回は2で作成したフットプリントにある1番ピンを作成したいので、1番ピンを+と考えてピン名を「+」、ピン番号を「1」、エレクトリカルタイプを「入力」、向きは「右」を指定しました。

 エレクトリカルタイプはどれを選べばよいかが中々難しいですが、基本的には入力、出力、双方向、パッシブの中から適切なものを選べばよいかと思います。
 どうしてもわからない場合は「パッシブ」を設定しておくと、そのピンを回路上で使っていなくても回路チェックでエラーが出なくなります。

 ピンのプロパティで「OK」をクリックした後、シンボル描画範囲内でクリックすると、以下のようにピンが作成されます。

 同様に2番ピンを作成してもよいですが、面倒な場合は以下のように「アイテムを選択」アイコンを選択した状態で対象を右クリックしてコピーするか「Ctrl + Cキー」でコピーして「Ctrl + Vキー」で貼り付けもでます。

「アイテムを選択」アイコンを選択した状態で対象をダブルクリックするとピンのプロパティが開くので、そこでコピーした方を編集すれば良いです。

 2番ピンは以下のようにピン名「ー」、ピン番号「2」、エレクトリカルタイプ「出力」、向き「右」にしました。

 これだけで最低限のシンボルにはなりますが、回路図にした時のマークも作成していきます。

 右側にある「円を追加」アイコンを選択して描画範囲内に円を描きます。

 最後に「アイテムを選択」アイコンを選択した状態でピンの位置を調整します。

 これでシンボルは完成なので「保存」します。


4:自作シンボルとフットプリントの使い方
 自作したシンボルとフットプリントを実際に使ってみます。

 適当なプロジェクトを作成して「回路図エディター」をクリックします。

 回路図エディターが開きます。

 右側にある「シンボルを追加」アイコンをクリックするとシンボル選択ダイアログが出てきます。検索欄に自作した対象の名前を入力するとヒットするはずなので、それを選択して「OK」をクリックします。

 その状態で描画範囲をクリックすると、そのシンボルが回路図に追加されます。

 シンボルとフットプリントを対応させるには、上部にある「フットプリントを割り当て」アイコンをクリックします。

 ダイアログが表示されるので、最初に真ん中の列から対象のシンボルを選択し、その状態で左側の列からフットプリントのライブラリを選択します。すると右側の列にライブラリのフットプリントが出てくるので対象のフットプリントをダブルクリックします。これでシンボルとフットプリントが関連付けられるので「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。

 実際にやると以下のようになります。

 シンボルとフットプリントの関連付けができたら、画面上部にある「PCBエディターに切り替え」アイコンをクリックします。

 PCBエディターが開きます。

 画面上部にある「回路図から基板を更新」アイコンをクリックします。

 ダイアログが立ち上がるのでデフォルトのまま「基板を更新」をクリックします。

 チェックが走り、エラーがなければ「閉じる」をクリックします。

 回路図で設定した必要なフットプリントがまとめて表示されるので、それを使って実際の基板であるPCBの設計を行っていきます。今回作成したフットプリントがちゃんと表示されていることがわかります。


 以上がKiCadでフットプリントとシンボルを自作する方法になります。

 今回はスルーホールのみの解説でしたが、表面実装の電子部品のフットプリントを作成する際には「SMD」を選択して同様に作成していけば良いです。
 本当に最低限の説明しかしていないので、よりちゃんとしたものを作りたい場合は参考資料に挙げているページ様を参照するか、各自で調べていただきたいと思います。

 また、場合によってはデータシートにも詳しい寸法が載っていないこともあるので、その場合は自分で定規などで実測しながらフットプリントを作成する必要があります。


・参考資料