ソースに絡まるエスカルゴ

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【アニメ感想】抱かれたい男1位に脅されています。 hug7「好きでいてもいいですか。」の演出について

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 今まで映画とかの感想は書いてきたのですが、今回は今現在放送中のアニメ「抱かれたい男1位に脅されています。」の7話の演出があまりに素晴らしかったので、それについての感想を書いていこうかと思います。本編はトップにリンクがあるのでそちらから確認してください。

 今回も今まで通り本編のキャプチャを交えつつ自分が感じたことをざっくばらんに書いていくので、ネタバレ前提で進めていきます。

 では始めます。


1:アバンの宇宙
 正直ここはよくわからない。今までの話数で出てきたカットか、もしくは次の話のどこかのカットに繋がるものだと思うのですが確認できていない状態。ただ何か劇的な変化を表現していそう。

2:見上げる鳥
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 宇宙からのカットの後、過去の話に切り替わるのと同時に画面の色もセピア調に。運転するバイクから准太が見上げるのは1羽の鳥。まだ羽ばたくことのできていない自分自身か、もしくはすでに役者の高みにいる高人さんを表現していると思われる。そして准太はまだその鳥まで届いていない…。

3:信号演出
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 続く信号のカット。セリフ通りの「順風満帆のオールグリーン」。一直線に並ぶだけの信号は画面としても理路整然としすぎていて、准太と同じくどこかつまらなさを感じるところがある。

4:高人さんとのファーストコンタクト
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 准太が高人さんと初めて会うシーン。高人さんが画面上手に、准太が下手になっている。また二人の間を照明の足が分断するようにも配置されている。二人の間に分かり合えない壁が存在していることを意味している。以後も二人を分断するような道具の配置が何度も出てくる。
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 また高人さんの背後に照明も配置されている。これは高人さんが文字通り光り輝くスターであることを視聴者に意識させる。
 上手にいる上に光まで背負っている、手の届かないほどの存在という強烈な印象を与えてくるシーンになっている。

5:三脚越しに視線を送る二人
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 三脚越しにお互いに視線を送っているという窮屈な画面。先ほども出た物理的な障壁という表現に加え、画面の窮屈さ、居心地の悪さも表現しているようにも思える。

6:キャラ同ポジのカット切り替え
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 痺れる! 最高にクール! まさに准太が高人さんに抱いているような感情を視聴者にもど直球で伝えてくる演出。文句なしにカッコいいと思える切り替え。

7:自販機前での二人の会話
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 このコーヒーを吹き出すようなギャグっぽいシーンでも、高人さんが上手、准太が下手という関係は保たれている。
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 そして詰め寄る場面でも、高人さんの背後には太陽からの光が注いでいる。

8:関係性の転換
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 高人さんが准太の肩を叩くこの場面で初めて上手と下手が入れ替わる。話としてもこれをきっかけに准太に変化が起きるので、まさに転換となるシーン。
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 この心象風景でも鳥が羽ばたいており、これからの変化を予感させる。

9:タブレットの意味
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 不安や戸惑いを紛らわすためにタブレットを乱暴に口へと放り込み、砕く。准太の中にある獣のような感情の一片も効果的に表現している。

10:ドラマの撮影
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 准太に変化のきっかけはできたものの、ドラマにおいても下手のままでいる。まだ覚醒はしていない。

11:再度同じように視線を送る二人
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 5と同じような感じで視線を送る二人。二人の間にあるのは三脚ではなく、マイク?(照明?)になっている。二人の間の壁がより小さいものになっていることの表現だろう。

12:バスシーン
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 hug3であったあのシーンと同じシチュエーション。視聴者はドキッとしてしまうが、同じシチュエーションでの二人の関係性の違いとむしろ准太が覚醒するきっかけを与えてくれる重要なシーンになっている。同じ場面を重要なところに持ってくるのが素晴らしい。

13:半覚醒後のドラマの撮影
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 准太が上手に、高人さんが下手に配置されている。准太は先のバスのシーンから明らかに変わった存在として描かれている。
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 抽象的なカットを挟みつつ濡れる事故もあって高人さんを襲おうとしてしまう准太。この抽象的な表現も心のごちゃごちゃを上手く表現できている。
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 続くカットも准太の目は画面に入れず、影に注目させる不穏で恐ろしい印象を与える。准太の中にある獣が目覚めた瞬間を見事に描いている。

14:大量のタブレットとガラスに映る自分
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 大量のタブレットを消費しており准太の心がかなり乱れていることが見て取れる。
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 そしてガラスに映った自分を見つめる中で准太は自分の中にいる獣の存在を自覚する。

15:高人さん以外でも上手になる准太
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 高人さん以外の相手にも、襲ってしまうかのような姿勢で体も大きく見せるようにして上手に位置している。獣を自覚し自分のものとした、まさに完全覚醒状態と言えるだろう。

16:覚醒後の二人の会話
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 准太は役者として覚醒した。しかしまだ高人さんと准太の間にはスタンドの棒で仕切られた壁がある。
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 高人さんに叩かれるシーン。ペットボトルから出た飛沫が准太の涙のようにも見える。准太は内心深いショックを受けていることが見て取れる表現。

17:エレベーター
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 ここでも二人の間を邪魔するようにエレベーターの下へと降る矢印が壁として存在している。
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 そして准太の「この人は俺との空間から早く出たいと思ってるんだろうな」のセリフの直後にピンポーンと正解の音をエレベーターが知らせる。

18:病院
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 病院のベッドで寝ている高人さんにキスを迫ろうとする准太。しかし画面にはやはり二人の間を仕切るものが存在し、キスは未遂に終わってしまう。

19:タブレット消失からの羽ばたき
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 自分の気持ちに気がつき迷いのなくなった准太の手からタブレットは不要になっていた。そして鳥が羽ばたいて飛び上がるのと同じくして准太自身もより高みを目指すことを決意する。准太が羽を得た瞬間を描いたエモいシーン。

20:決意の別れ
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 ドラマの撮影も終わりに近づいた時、准太は高人さんの前で手を伸ばそうとするがやめる。照明が今度は准太に当たるようになっていることと、のちに高人さんを見下ろす立場(抱かれたい男1位を取る)になることを暗示しているシーン。

21:色づきもう一度出会う
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 セピア調だった画面が一度白くなり、そしてはっきりとした色へと変化する。退屈だと思っていた准太の日々が生まれ変わり、そしてまた高人さんに出会い色づいていくという演出。まさにやられたという感じで最高の盛り上がりを見せた後でラストのセリフが「高人さん」で締めるという大感動で終わる。

 ほぼ全部の流れを書いてしまった感じはありますが、本当に丁寧に演出されていて准太の気持ちと高人さんとの関係性がビシビシと伝わって来る作りでした。この記事執筆時点で2回視聴しているのですが見るたびに新しい発見がある素晴らしい回でした。お話としても素晴らしいです。

 以上が抱かれたい男1位に脅されています。のhug7を見て思ったことです。

 この作品のタイトルにあるように女性向けの作品で男性同士の恋愛をテーマにしていますが、その内容は純粋な人間関係の恋愛を描いています。現在放送中の「やがて君になる。」では女性同士の恋愛を描いているため、対比して鑑賞するとまた違いが楽しめるかと思います。個人的には君になるまでを描くのが「やがて君になる。」で、君になったあとを描いたのが「抱かれたい男1位に脅されています。」だと思い、両方楽しんでいます。

 やがて君になるの方も演出が凝っていて「どのシーンにも演出的意図があるのではないか?」と思いながら見れる素晴らしい作品です。

 未見の方は食わず嫌いをせずに見るのをオススメします!

 抱かれたい男1位に脅されています。はいいぞ!!